料理日記/読書メーター
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2024年 01月 02日
あけましておめでとうございます。
昨年は読むのがかなり遅くなってしまい、あまり本を読めなかった。 ノンフィクション、フィクションともに読後感が重い作品が印象に残ったが、あえてオススメは「鋼鉄紅女」。 エンタメとしてスカッと楽しめた。 次点では「影の王」。暗い描写が続く重い話だが、描かれる情感がとても深い。 ブレーキング・デイ―減速の日― 下: 減速の日 (ハヤカワ文庫SF)の感想 上巻を読み終わった日付を忘れたので、下巻と同じタイミングでどちらも登録した。幻影の正体が判明したところから一気に物語が急展開した。もう少し船の歴史や主人公以外の登場人物のバックボーンなどについて説明があったらと思った。それでもいろいろな思惑がある勢力をきちんとまとめ上げた結末はよかったと思う。 読了日:12月20日 著者:アダム・オイェバンジ ブレーキング・デイ―減速の日― 上: 減速の日 (ハヤカワ文庫SF)の感想 恒星間世代移民宇宙船SFは昔から好きだったので期待して読み始めた。タイトルどおり旅の最終盤ですでに7世代が経過しており、その中で固定した社会や進化した技術、枯渇した資源、廃棄された設備などが複雑に絡み合っている。登場人物の感情、思考、行動はわかりやすく描写されているので読むのに苦労はないが、全体像は相当奥深く感じられた。 読了日:12月20日 著者:アダム・オイェバンジ ソレオレノ (2) (ガガガ文庫 ガき 3-5)の感想 主人公とても内省的な魅力的であり、ストーリー展開もとても面白い。強敵に個人の力ではなく、チームワークで残り超える戦い方も魅力的だった。私の読解力が低いのか最後の戦闘のイメージがややわかりにくかったのが残念。 読了日:11月03日 著者:喜多川 信 それは丘の上から始まったの感想 関東大震災で始まった横浜での朝鮮人を主な被害者とする虐殺事件を綿密な調査で調査した資料。公的な記録、新聞などの報道資料、また著者が独自で調査した当時の子供たちの作文など、膨大な資料から横浜南部の丘から事件が発生したところ、その後の具体的な広がりを解明している。本書の優れた点は、事実を余談をもって断定しない点である。調査資料の内容、著者の見解を明確にわけるだけでなく、調査資料もその元が公的記録、報道、手記、作文などの媒体や作者を意識して調査し、事実を解明している。また資料から引用される具体的描写も興味深い。 読了日:10月20日 著者:後藤 周 ルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書)の感想 トランプ大統領当選後に支持層が多い地域を再取材した本。保守的な価値観を持ち、古くからある産業の勤勉な労働者層が、技術の進化やサプライチェーンのグローバル化のしわ寄せで生活が成り立たなくなって、その不満と現状打破への期待がトランプ当選を後押しした。その背景に民主党が田舎や郊外から都市部のインテリ層や多様な住民へ軸足を移したことが原因という後半の識者の指摘も腑に落ちた。日本でも自民党が地方から都市部に地域基盤を移そうとしているが、あまりうまくいってない。また維新も同じところをねらっているような気がする。 読了日:10月14日 著者:金成 隆一 福田村事件 -関東大震災・知られざる悲劇の感想 映画を観てから読んだ。筆者の筆致から関係者全員に対する敬意が感じられた。丁寧な資料調査や取材をもとに、なにがどのようにして起きたかは説明するが、その理由には容易に立ち入らないということがよいのかもしれない。もちろん筆者の地元の事件を調査するのだから慎重になっただろうし、また加害者側の証言は裁判などの公的記録しかないため、理由を推し量れないということもあると思う。被害者のインタビューと手紙の淡々とした内容が、逆に傷の深さと当時の差別への諦念がにじみ出ていた。 読了日:09月10日 著者:辻野弥生 冬にそむく (ガガガ文庫 ガい 10-2)の感想 常冬という設定だが、10代の青少年が持っている無力感や将来への閉塞感の象徴ではないかと感じた。二人の関係性やストーリーはオーソドックスだが丁寧で好感がもてた。 読了日:09月08日 著者:石川 博品 鋼鉄紅女 (ハヤカワ文庫SF)の感想 とても面白かった。主人公は纏足のためうまく歩けないというほどヘビーな生い立ちや状況の話なのだが、展開はなろう系やライトノベルばりの怒涛の勢いがあった。どちらかといと、任侠者の王道テイストかもしれない。中華設定とロボットものの組み合わせ方もちょうどいい感じがした。あからさまにジェンダーを意識した作品であるが、そこの含めての面白さだ。逆にそのあたりが気になっても、骨太な話で十分楽しめると思う。初めの方であるアニメに設定が似ていると思ったらあとがきで言及があってちょっと笑った。 読了日:09月02日 著者:シーラン・ジェイ・ジャオ 魔王2099 3.楽園監獄都市・横浜 (ファンタジア文庫)の感想 ライトノベルにしては刊行間隔があいたが、通常の小説ではよくある程度なので気にならなかった。軽快なテンポで進んで楽しかった。ラストの展開は途中で予感があったもののしっかりと描写されていてよかった。最後のバトルはMMOのレイドバトルみたいだった。 読了日:08月18日 著者:紫 大悟 ハンチバックの感想 とても面白かった。マジョリティ(健常者)の無意識の暴力性へ訴えに注目が集まりがちだが、各個人が望むそれぞれの満足や不満の形が社会においてどのように絡み合うのかという妙味を楽しめた。この小説では、漫画、アニメ、BL、風俗など用語が主人公の内面を構成する要素なっているので、ガジェットとしてだけ消費するのはもったいない気もした。 読了日:08月17日 著者:市川 沙央 「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門の感想 名前は知っている本がほとんど、読んだ本は6割くらいだった。最近の本はひろわれているが、古典と最新の間(2000年前後)は薄めなな印象。着目が現実と未来という点から、ファンタジー的な要素のものは抜かれているのは残念。 読了日:08月15日 著者:冬木 糸一 影の王の感想 第二次世界大戦の直前~前半におきたイタリアのエチオピア侵攻を生き抜いた女性たちの物語である。最初から主人公が別の女性に酷い扱いを受けるのだが、その加害を行う女性にも物語があり、さらにその家の料理人、イタリア軍にいる女性スパイにもそれぞれの物語である。女性たちは正義や大義のためだけに闘うわけではなく、むしろそれぞれの生活や立場で戦争や男性、階級による暴力からできるだけ被害を受けないように耐えることが戦いの中心となっている。段落ごとに語り手が変わる文章に苦労したが、「合唱」にはあっていた。 読了日:08月11日 著者:マアザ・メンギステ マルドゥック・アノニマス 8 (ハヤカワ文庫JA JAウ 1-25)の感想 登場人物が多すぎて抗争部分は正直あまり話についていけなかった。ようやく終盤バロットとハンターに話がフォーカスしてきて本筋に戻ってきたように思う。 読了日:07月22日 著者:冲方 丁 ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3 (ハヤカワ文庫JA)の感想 旅路の星系?の描写などにSF感はあるが、主体はやはり二人の関係性の描写かなと思ったら、最後にきちんとSF的テーマを提示してきて俄然面白くなった。続きが楽しみ。 読了日:07月19日 著者:小川 一水 巡航船〈ヴェネチアの剣〉奪還! (ハヤカワ文庫SF SFハ 22-1)の感想 ドタバタしたスペースオペラで楽しめた。ずっと物語が動き続けて落ち着かない感じはしたが、読みやすいので問題なかった。 読了日:07月05日 著者:スザンヌ・パーマー 九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション (竹書房文庫 ん 2-1)の感想 海外ドラマのような構成、登場人物、語り口だった。日本がアメリカ、中国に分割統治されるという設定は、米ソ冷戦→米中冷戦への変化によって、東西ドイツ→ウクライナと境界線への移動を、アジアに持ってきたら容易に想像できるところだろう。大国が戦争を宣言せず、他国を占領するということはよくある手法だが、そのまま占領状態でそこそこ治安が安定してしまうというのは日本ならではかもしれない。個人的には楽しめたが、文章に少し癖は感じた。 読了日:06月03日 著者:マルカ・オールダー,フラン・ワイルド,ジャクリーン・コヤナギ,カーティス・C・チェン ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)の感想 トランプ支持者たちに直接インタビューしてその実像を描写している。予想していたとおり支持している人たちは、トランプの差別的主張に賛成しているわけではなく、現状の不満を打破してくれることを期待していた。日本の右翼的政党の支持者と重なる部分が多い気がする。 読了日:05月20日 著者:金成 隆一 蘇りし銃 (創元SF文庫)の感想 ジェダオ中心のストーリーとして完結した。個人的にはチュリスのキャラクターが好きだったので登場が少なめで残念だった。 読了日:05月13日 著者:ユーン・ハ・リー 愚行の世界史(下) - トロイアからベトナムまで (中公文庫)の感想 アメリカ独立をイギリスの失政としての説明は、著者の別の本(最初の礼砲)がいきいきとした描写でわかりやすい。この本だけでは説明不足に感じた。ベトナム戦争については知っている政治家が多いこともあり、イメージがつかみやすい。ロシアのウクライナ侵攻や台湾での米中対立をみると、人類が愚行を犯す前提で、その被害をどように予防し、回復するかを想定したほうがいいのかもしれないと考えてしまう。 読了日:04月23日 著者:バーバラ・W・タックマン 愚行の世界史(上) - トロイアからベトナムまで (中公文庫)の感想 愚行とは当時から十分批判があったのに集団としてそのまま変更せずに行われた失政と定義されている。日本の真珠湾攻撃もその例にあたるとしている。トロイアの場合は神話的なのでやや説話的だが、ルネサンスでのローマ教会の堕落はその後のプロテスタントの興隆を助長したとして確かに失政である。古い本なので著者が権力者に求める高潔さが現在より高いので、若い世代に響くのか少し疑問がある。 読了日:04月09日 著者:バーバラ・W・タックマン 竜の姫ブリュンヒルド (電撃文庫)の感想 展開が早く、容赦なくて大変好みだった。特に主人公の従者のリアリスト、ロマンチストの混在した様子がいい感じだった。作者が書きたいものがはっきりしていて最後までぶれてない感じがした。今後もこの方向性を発展させてほしい。 読了日:03月20日 著者:東崎 惟子 中国共産党と人民解放軍 (朝日新書)の感想 中国の人民解放軍が共産党の軍隊という位置づけとしてわかりやすく説明している。ただ軍隊全体の普遍的な真実としては、実践は軍隊を強くする、特に敗戦は強くする。日本は一度軍隊が解体され、また明確に敗戦を意識できてないので、改善効果は薄い気がする。後半の議論は香港、ウクライナの状況から、現在の台湾情勢は日本にとっても楽観できないと思う。 読了日:03月12日 著者:山崎雅弘 マシンフッド宣言 下 (ハヤカワ文庫SF SFテ 12-2)の感想 世界観は面白かったが、人間だけの争いで終止してしまったところが少し残念だった。 読了日:02月18日 著者:S・B・ディヴィヤ マシンフッド宣言 上 (ハヤカワ文庫SF SFテ 12-1)の感想 最初世界観をつかむのに時間がかかったが、登場人物が抱える問題が現代の人間と特に変わらないことから、だんだん慣れてきた。今後の展開があまり読めないので下巻が楽しみだ。 読了日:02月01日 著者:S・B・ディヴィヤ 第二次世界大戦秘史 周辺国から解く 独ソ英仏の知られざる暗闘 (朝日新書)の感想 第二次世界大戦に参加したり、影響を受けた国のうち、主要国以外の概要をコンパクトに説明している。第二次世界大戦前後の動きだけでなく、その国の成り立ちから説明しているのが興味深かった。特にバルト三国やユーゴスラビアが分解したあとに成立した国の由来は初めて知ることが多かった。第二次世界大戦の前には各国にナチスに親和的な政治勢力がいたことは、現在も緩衝地帯になっている国では大国の代理となる勢力がいることと通じるものがある。 読了日:01月22日 著者:山崎雅弘 読書メーター #
by lifeforone
| 2024-01-02 23:25
| 読書
2023年 01月 09日
あけましておめでとうございます。 昨年は思ったほどは読めなかった感じだった。 一番印象に残ったのは「ベルリンは晴れているか」。 以前から気になっている作品だったが、佐藤賢一作品に通じる雰囲気が楽しめた。 ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー (講談社タイガ)の感想 一番好きなのは「一一六二年のlovin' life」。歴史改変の仕組み的なところではなく、純粋に表現がとてもよかった。 読了日:12月27日 著者:石川 宗生,小川 一水,斜線堂 有紀,伴名 練,宮内 悠介 平和という名の廃墟 下 (ハヤカワ文庫SF)の感想 少し展開が強引な感じがしたがやはり面白かった。 読了日:11月27日 著者:アーカディ・マーティーン 平和という名の廃墟 上 (ハヤカワ文庫SF)の感想 前作と雰囲気が同じでよかった。 読了日:11月25日 著者:アーカディ・マーティーン からゆきさん 異国に売られた少女たち (朝日文庫)の感想 シベリア出兵や尼港事件で天草、長崎出身の女性の被害者が多いのはなぜかを知りたくて読んでみた。新聞記事から当時の社会からの視点を織り交ぜつつ、当事者である女性たちによりそう筆者の描写が優しい。 読了日:11月24日 著者:森崎和江 星霊の艦隊 3 (ハヤカワ文庫JA JAヤ 12-3)の感想 設定先行な感じは最後まで変わらないが、楽しく読めた。凝集人格構造と多様人格構造の設定は面白いと思ったが、その知性の違いをもう少し描写してほしかった。 読了日:10月29日 著者:三宅 陽一郎,山口 優 星霊の艦隊 2 (ハヤカワ文庫JA JAヤ 12-2)の感想 設定先行な感じは否めないし、話の展開も納得感はあまりないが、楽しく読めた。 読了日:10月26日 著者:山口 優 最初の礼砲 --アメリカ独立をめぐる世界戦争 (ちくま学芸文庫)の感想 アメリカ独立戦争の話だが、オランダの話から始まり、メインはイギリスの動向、ワシントンの動きが出てくるのは終盤になってからで、決め手はフランス艦隊の動きと、多国間関係の中でいかにしてアメリカの独立が果たされたのかを描写している。魅力的な人物像を描く作者の力量は本作でも建材で、登場人物は能力や成果に関わらず等身大で面白い。フランスが大きくアメリカ独立に関わっていたことをより強く認識した。そのためにその後のフランス革命につながるとは因果を感じた。 読了日:10月23日 著者:バーバラ・W・タックマン 嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA)の感想 作者はリアリティのゆらぎを表現するのがとても上手いと思う。真に迫るような描写ができるからこそリアリティを感じて、それが最終的にどうなるのか、読者が困惑するような感覚を楽しんでいるのではなかろうか?「魔術師」「嘘と正典」は特にその印象が強かった。 読了日:10月08日 著者:小川 哲 太平洋戦争秘史 周辺国・植民地から見た「日本の戦争」 (朝日新書)の感想 太平洋戦争に関わった日中米以外の植民地や第三国が戦前、戦中、戦後どのような影響があったのかコンパクトに纏まっている。なんらかの主張に巻き取れないように抑制された説明でわかりやすい。フィリピン、インドネシア、オーストラリアあたりは有名だが、ミャンマー国軍と南機関の繋がりの具体的な説明や中南米諸国など知らないことがまだまだあり興味深かった。 読了日:10月01日 著者:山崎 雅弘 硫黄島-国策に翻弄された130年 (中公新書)の感想 再読。ウクライナでロシアに占領された地域から住民が強制移住させられたり、ロシア軍でもシベリアなどの力の弱い地域の部隊が前線に立たされたりと、中央権力の無謀によって辺境地域の住民が苦難にあうことの一例として、硫黄島の歴史も忘れないようにしたい。 読了日:09月21日 著者:石原 俊 第一次世界大戦 (ちくま新書)の感想 夏は過ぎてしまったが、ウクライナの情勢も考えて再読。まさかこうなるとは誰も考えてないところから戦争は長期化、泥沼化するということが、今年再現されようとしているように思える。 読了日:09月18日 著者:木村 靖二 ヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのかの感想 「家畜化」という言葉は意味が強すぎるきらいがあるが、調和性や秩序への順応など、いわゆる社会性を獲得する動物全般への特徴が人類と共通するというのは興味深い。後半の現在の社会問題への展開はやや勇み足のような感じもした。 読了日:09月16日 著者:ブライアン・ヘア,ヴァネッサ・ウッズ カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅 (中公新書ラクレ 771)の感想 著者ならではの幅広いフィールドから不思議な生き物を紹介されている。ハニーポッサムとジャイアントウェタが気に入った。もともと90年代に動物園の話で著者を知ったので、生き物への愛情や優しいまなざし、好奇心あふれる文章は本当にいきいきしていて読んでいて楽しかった。 読了日:09月13日 著者:川端 裕人 南北戦争-アメリカを二つに裂いた内戦 (単行本)の感想 南北戦争の軍事的な展開がよくわかった。将軍などの個性に説明に比重が置きすぎている気がするが、まだ近代戦になっていない時代なので、指揮官の素養が重要な時代だったのかもしれない。南北戦争の原因を奴隷制のみとしているような説明は、戦後の黒人待遇が改善されないことから、やや違和感があった。 読了日:09月10日 著者:小川 寛大 20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代 (岩波新書)の感想 さすがに1900~1970年を新書一冊にまとめるのは無理があるのではないかと思ったが、あくまでアメリカ社会内部での変化に視点を絞ることでうまく説明されていた。 読了日:09月10日 著者:中野 耕太郎 南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書)の感想 南北戦争を含めた19世紀アメリカの流れがよく分かる。すでに帝国主義的拡大の流れが南北戦争以前にあり、連邦制を集権機構になっていたと感じた。南北戦争後に黒人は奴隷ではなくなっても次第に奴隷と同じ状態に戻っていったということに悲哀を感じずにはいられない。 読了日:09月10日 著者:貴堂 嘉之 植民地から建国へ 19世紀初頭まで (岩波新書)の感想 アメリカ入植者たちが自分たちは誰であり、自分たち以外(先住民、黒人)はどういう立場かという意識がよく分かる気がした。 読了日:09月10日 著者:和田 光弘 日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)の感想 漫画版を読んだので、ものすごく久しぶりに再読。淡々とした語り口だが、天皇を含む登場人物の描写は厳しさを感じられる。 読了日:09月03日 著者:半藤 一利 星霊の艦隊 1 (ハヤカワ文庫JA JAヤ 12-1)の感想 久しぶりに設定から入る小説を読んだ。作者が設定を考えるのを楽しんいる感じがして、読んでいる方も楽しかった。 読了日:08月30日 著者:山口 優 ケアの倫理 (文庫クセジュ)の感想 概論は理解できたと思うが、個別の議論や検討内容についてしっかりついていくことができなかった。私が最近の議論について勉強不足のためだと思う。 読了日:08月27日 著者:ファビエンヌ ブルジェール いずれすべては海の中に (竹書房文庫 ぴ 2-2)の感想 習作のような作品もあるが、作者のテイストがよく分かる短編集だった。個人的には「イッカク」が好みだった。 読了日:08月19日 著者:サラ・ピンスカー 兄の終いの感想 とてもおもしろくて一気読みしてしまった。息つく暇もない強行軍の中で、兄と甥の生活の欠片にふれる中で、著者の中で様々な感情が溢れてくるのがよく分かる。 読了日:08月14日 著者:村井 理子 デスパーク (ハヤカワ文庫SF)の感想 社会制度の設定が面白い。5人で身体をタイムシェアリングは正直かなり難しいと思うのだが、社会制度がそうなってしまったらなんとなく受けれてしまうのかもしれない。その上で他の2つの特殊な人々との寿命をかけたデスパークも面白い。肝心のミステリーは最初のほうであたりがついてしまったのが残念。 読了日:08月12日 著者:ガイ・モーパス 人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)の感想 2010年以降のDNA解析での知見がわかりやすくまとまっている。種や集団の単純な分岐だけでなく、種ごと世代ごとに各地への拡散が何度も発生していることがよくわかった。ヤムナヤ文化や日本に移動した集団の説明など大変面白かった。 読了日:08月10日 著者:篠田 謙一 完全版 チェルノブイリの祈り――未来の物語の感想 なにかをコメントするのがとても難しい。チェルノブイリの事象や影響はあまりに大きくて著者を含めて一人一人が深い傷と想いがある。記されているのはその一部だというのに受け止めることができない。特に気になったのはカザフスタンやキルギスからロシア崩壊後の混乱を避けて汚染地帯に移住した人々だ。この人達にとって今のロシアの覇権主義は失われたなにかを取り戻すという意味になっているのではないか。 読了日:08月08日 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 新しい世界を生きるための14のSFの感想 そろそろ歳なのでもう読むのきついかなと思ったが、意外と楽しめた。作品数が多くて新しい作家を知ったのは良かったが、期待したほど多様性はなかったように感じた。編者の関連書籍の紹介は熱量を感じた。「Final Anchors」「回樹」が好み。「もしもぼくらが生まれていたら」の紹介は視点を特定の技術や生活、行動が禁忌とされた作品のほうが焦点があっている気がする。 読了日:08月06日 著者:芦沢 央,天沢 時生,黒石 迩守,琴柱 遥,佐伯 真洋,坂永 雄一,斜線堂 有紀,高橋 文樹,蜂本 みさ,宮西 建礼,麦原 遼,murashit,八島 游舷,夜来 風音 永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)の感想 永山死刑囚の第二の精神鑑定からその生い立ちや犯罪にいたる心情を解きほぐしていく。ものすごく不遇であり、そこから自暴自棄になっていくことは理解はできる。しかしだからといって犯罪の刑罰をどのように決めるのかは難しい。少年事件といっても18歳以上である。個人的に衝撃だったのは祖母が尼港事件の生き残りだったということだ。シベリア出兵がいかに大きな暗い影響を与えたか再認識した。時期的に元首相の事件の容疑者の生い立ちについてもいろいろと考えてしまう。 読了日:07月24日 著者:堀川 惠子 竜殺しのブリュンヒルド (電撃文庫)の感想 好みのテイストだった。続編を書くのは難しい感じだからライトノベルビジネスとしてすべてをこうはできないと思うが、まだこういった作品を出版でいることを嬉しく思う。きちんと酷いことを覚悟をもってやり遂げる主人公の強さがよく輝いてた。 読了日:07月20日 著者:東崎 惟子 クロストーク 下 (ハヤカワ文庫SF)の感想 アイルランド移民というのはアメリカの中でもやはり独特なのだろうかとふと思った。ルーツへのこだわりを感じさせるいろいろな小説、映画があるので。上巻でも書いたが、コメディだとノリが過剰なので、シリアスなトーンの作品のほうが好きです。 読了日:07月17日 著者:コニー・ウィリス クロストーク 上 (ハヤカワ文庫SF)の感想 作者の小説は面白いのだが、ノリが饒舌すぎるところがあって読んでいて疲れるところもある。シリアスな方が個人的にはトーンが抑えらている分好み。 読了日:07月13日 著者:コニー・ウィリス Genesis 時間飼ってみた: 創元日本SFアンソロジー (創元日本SFアンソロジー 4)の感想 以前購入して途中まで読みかけていたので残りを読んだ。小川一水は安定しているが、ちょっと作風がおなじになってきたような気がする。溝渕久美子「神の豚」はとても思弁的な感性豊かなSFだった。次回作も楽しみ。 読了日:07月10日 著者:小川 一水ほか 戦場のコックたち (創元推理文庫)の感想 ずっしりとした読後感が心地良い作品だった。途中ミステリー仕立てが作品の雰囲気とあまりマッチしない気もしたが、逆に謎解き的エンタメ性がなければ重すぎて現在の日本ではあまり楽しめない作品になってしまったかもしれない。 読了日:07月09日 著者:深緑 野分 ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たちの感想 インタビューから欧米での特攻隊(カミカゼ)がいかに狂信的に思われているかよく分かる。著者の筆がのりすぎている気がするところもあるが、情景の描写には力がある。負け戦に追い込まれていくと無茶な理屈ほど通ってしまうというのは国によっては変わらない。 読了日:07月03日 著者:三浦耕喜 法治の獣 (ハヤカワ文庫JA JAハ 13-1)の感想 思考実験としてよく考えられていて面白かった。知性を感じさせる振る舞いがどんな生態系でどのように発達するか考えるのは楽しい。 読了日:06月26日 著者:春暮康一 人間らしさとは何か : 生きる意味をさぐる人類学講義 (河出新書)の感想 進化人類学の非常に幅広い視点でいかに人類が動物から文明生活を営むようになったのか、現在の知見から得られる仮説を幅広く紹介されている。人類の遺伝的多様性が低いということがどういうことかという説明が面白かった。 読了日:06月12日 著者:海部陽介 ベルリンは晴れているか (単行本)の感想 第二次大戦で敗戦直後のドイツというあまり想像していなかった舞台だが、十分その雰囲気を楽しめた。もっとライトな描写だったら嫌だなと事前に思いこんでいたが杞憂であった。もちろん実際には心身ともに傷ついて重苦しい人々が多かっただろうが、エンタメとのバランスが取れていると感じた。佐藤賢一のフランスを舞台にした小説と同じように、異国、異時代にいるような感覚を覚える。主人公にまつわる物語はミステリー的ファンタジーだが、それで揺れ動く人々に心動かされた。 読了日:05月21日 著者:深緑 野分 逃亡テレメトリー: マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫 SFウ 15-4)の感想 弊機の一人称の描写がとても気に入っている。戦闘では人も機械も一号、二号とナンバリングして状況整理するシーンが特に好きだ。淡々としているようでユーモラスな考え方を読むと、心が前向きになるような楽しさがある。 読了日:05月05日 著者:マーサ・ウェルズ ソレオレノ (ガガガ文庫 ガき 3-4)の感想 レーベルとしては珍しい主人公の設定ではないかと思うが、世界観やストーリーとマッチしていてよかった。主人公が単純に無双するわけではなく、うまくいかないことを知恵と運でなんとか乗り切っている感じがいい。虫樹などの設定もよく考えられている。 読了日:05月04日 著者:喜多川 信 「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)の感想 思ったよりアカデミックな内容だった。もっと筆者のエピソードをベースとした読み物だと思っていた。内容としていかに制度的な基盤ではなく、緩やかな関係性の中でどのように仕事や生活が成り立っているのか、またその関係性はどういった価値観や考え方から生み出されているのかを説明している。「仕事は仕事」の意味が仕事を神聖視する日本とは全く異なる意味であることは興味深い。また、借りを返してもらうことより、新たな借りを作るほうが容易に思えるというのは少しわかる気がする。 読了日:05月03日 著者:小川 さやか マルドゥック・アノニマス 7 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-24)の感想 登場人物が多くて状況を把握するのが難しくなってきた。バロットの行動のみに意識して読めば楽しめるのだが、他の部分を組み合わせることがうまくできてない。 読了日:05月02日 著者:冲方 丁 「ハコヅメ」仕事論 女性警察官が週刊連載マンガ家になって成功した理由の感想 ハコヅメの作者が漫画家になる経緯や編集者、家族とのやりとりなどのインタビュー。ところどころ他の対談者だけが盛り上がっているところに、冷静にわからないと突き放せるあたりにメンタルの強さを感じた。 読了日:04月30日 著者:泰 三子,山中 浩之 【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫)の感想 久しぶりに再読。いろいろと忘れているルールが多かった。わかりやすい文章を書くために意識すべきことがコンパクトにまとまっている。 読了日:04月29日 著者:本多勝一 戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇 (講談社文庫)の感想 明治から大正に盛り上がってきた演劇(新劇)が、政治、特に左翼活動との関わりを経て、戦時体制下の弾圧と戦災で多くの被害をだす様子を、生々しく描写されている。著者の特徴だがとにかく登場人物のエピソードの選択と具体的な描写が素晴らしく心に響く。戦後の戦時協力の是非を巡る混乱や入市被爆に怯える様子も人間らしくてとても興味深かった。体制に批判的な言説に冷笑的、排他的な態度が増えている現状を憂慮するのは当然だと思う。 読了日:04月28日 著者:堀川 惠子 未踏の蒼穹 (創元SF文庫 ホ 1-28)の感想 作者らしい作品。テンポよく読めて楽しめたが、謎の解明についてはなんとなく最初から予想がついていたのと、登場人物が典型的な造形だったので、意外性は少なかった。 読了日:04月20日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン 「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション (ちくま学芸文庫)の感想 個人的にはやや古めかしさが強く感じられた。 読了日:04月08日 著者:中井 久夫 獣たちの海 (ハヤカワ文庫 JA ウ 4-6 The Ocean Chronicle)の感想 オーシャンクロニクルシリーズは作者の悲観的な描写が作品世界とよく共鳴してとてもいい雰囲気だといつも思う。個人的には最初の「迷舟」がお気に入り。事実としては問題は何も解決しないストーリーなのだが、それでも登場人物の心になにかが残り、それが本当の物語であること描ききっている。 読了日:03月19日 著者:上田早夕里 100の地点でわかる地政学 (文庫クセジュ962)の感想 津村記久子さんの「枕元の本棚」からの紹介で読んだ。フランス中心での選択で、2010年頃の記述であるため、まだスマホ登場前、中国が明らかに超大国になる前(BRICsから2008年夏の北京五輪で頭一つ抜けたぐらい)である点は注意が必要。それでも世界の区分けでロシア圏(旧ソ連)を設定して、ロシアに追随するか、離反するかでどちらを選ぶにしても大きな影響をうけるとしているのは、今のウクライナをみると当たっていると思う。日本は東京がすでにパワーの源泉に選ばれず、4つの国際海峡が中国、ロシアの関所として注目されている。 読了日:03月12日 著者:オリヴィエ ダヴィド ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-35)の感想 前作と少し登場人物の印象が少し違う気がするが、たぶん私の勘違いだろう。中心の二人の気持ちの関係性、感情の綾というよりパワーゲームとしての関係になっていて、なんとなくシーンごとの優勢劣勢を楽しめはするのだが、もう少し深いつながりようなものを見てみたかった。 読了日:03月04日 著者:小川 一水 カモフラージュ (集英社文庫)の感想 久しぶりにみずみずしさを感じる小説だった。自分が歳をとったためだと思うが、なんだかすごく若さを感じた。あとがきで書きたいことは同じでそれを異なる表現として作品化しているというのは、なんとなく読んでいて通底する居心地の悪さと前向きさから感じた。 読了日:02月20日 著者:松井 玲奈 枕元の本棚 (実業之日本社文庫)の感想 まず紹介が上手だなと思った。どの本も面白そうに思えて何冊か買ってしまった。「他人の職業はSF」でやりがいではなく義務的にやっているほうが話が面白いというのには激しく同意した。 読了日:02月04日 著者:津村 記久子 魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原 (ファンタジア文庫)の感想 正直、どうしてライトノベルはすぐに学園モノになってしまうのかと、読む前はあまり期待していなかった。しかし、読み始めるとあまり無理な学園展開はなく楽しめた。秋葉原の二面性は電気街からオタクの街、そして普通のビジネス街と少しずつ変質している実際の街とも通じる気がする。 読了日:01月14日 著者:紫 大悟 魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿 (ファンタジア文庫)の感想 いろいろと考えることなく楽しめた。論理的体系があるファンタジーものは大好きだし、それがサイエンスと融合したダークな世界観はTTRPG「シャドウラン」を思い出させる。魔法、科学それぞれで力があったものが、融合によって裏道的に無効化されるような設定がよかった。 読了日:01月13日 著者:紫 大悟 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年 (文春文庫)の感想 広島への原爆投下については、「この世界の片隅に」を知ってから本を読んだり広島にも行ったが、原爆供養塔のことは恥ずかしながら知らなかった。ただ、この本を前半の主人公である佐伯さんの人生から受ける感銘を滅冥するのは難しい。原爆供養塔の世話や遺骨返却へのひたむきさは単なる懺悔や慟哭ではなく、少しでも世の中が良くなるように、非道がない世界になるようにといった祈りのように思えた。 読了日:01月10日 著者:堀川 惠子 裁かれた命 死刑囚から届いた手紙 (講談社文庫)の感想 長谷川死刑囚からの手紙をベースにどういった生い立ちから、どのように罪を犯し、裁かれたのかを再検証している。元検察官のいう「遅いんですよ…」が印象的で、本書を表す象徴とも言える。司法制度は有限の時間の中で捜査、裁判を行うので、後からいろいろな事実が判明しても、判決を修正することはできても時間は取り返せない。その限られた資源と時間の中で、いかに透明性と公平さを保持できるかが課題だと思う。捜査や取り調べ過程の可視化と記録の十分な保全と一定期間での公開、再評価の仕組みづくりが大切だと改めて思う。 読了日:01月06日 著者:堀川 惠子 死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの (講談社文庫)の感想 死刑というか、そもそも司法制度についての無知を改めて知った。量刑不当では最高裁に上告できないとか。個人的には法律の解釈や裁量、判例などが時代とともにある程度変化するのは仕方ないとは思う。しかし、恣意的な判断やブレがあったときに、それを隠蔽したり押し通りたりする組織的な硬直性が日本の組織には多すぎるのが課題だ。主体的な判断を放棄して、自分のイノセントさを示さないと許されない空気が日本にはあり、それが死刑の基準の機械的判断にもつながっている気がする。 読了日:01月03日 著者:堀川 惠子 叡智の覇者: 水使いの森 (創元推理文庫 F あ 1-3 水使いの森)の感想 大団円で読後感がよかった。世界設定の精密さもきちんと描写されていて、あるべきところに収まった感じ。できれば妹姫の話もあれば嬉しかった。 読了日:01月01日 著者:庵野 ゆき 読書メーター #
by lifeforone
| 2023-01-09 21:39
| 読書
2022年 01月 08日
あけましておめでとうございます。 昨年はペースの緩急はあったが、在宅時間が多くなったため、本はそこそこ読めた。 それでもなんとなく通勤のときの方が本が読めていたような気がする。 一番印象に残ったのは「暁の宇品」。 戦前の帝国主義の起点として帝国の拡大を担った広島の宇品港にあった陸軍の船舶部門の栄枯盛衰を、きちんと人間の歴史として描写した素晴らしい本だった。 著者の他の作品を読み進めている。 ラクスミィの孤独な戦いという印象が強い。だからこそ最後は嬉しかった。少しストーリー展開が雑に感じるところもあるが、ドラマティックな展開はエンタメとして楽しめた。アナンの選択は賛否ありそうだが、理解できないこともない。 読了日:12月30日 著者:庵野 ゆき 水使いの森 (創元推理文庫)の感想 海外作品だが「女神の誓い」シリーズを彷彿させる。世界観や設定が単なる能力としてだけでなく、人々の社会や生活の中でどのような活用や影響があるか描写されており、リアルなワクワク感がある。女性同士の関係性の描写だけでなく、他の人物もきちんと経緯と感情があり、群像劇としても楽しめた。大河ファンタジーの序章として楽しみ。 読了日:12月25日 著者:庵野 ゆき シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書)の感想 シベリア出兵が始まる前の経緯から終わりまで丁寧に説明されている。諸外国からの働きかけを含めて動きはわかりやすい。ただ、それでもなぜシベリアにあれだけの大規模出兵をして、さらにほとんど成果がなかったのに看過されたのかは不明なままだった。 読了日:12月21日 著者:麻田 雅文 時の子供たち (下) (竹書房文庫 ち 1-2)の感想 最後の結末までよく考えられたSF作品だった。知性化というとブリンの知性化戦争シリーズを思い出すが、それとの比較が作品の時代性の象徴のような結末だった。下り坂でまだるっこくて暗い人類たちと、文明がどんどん進化していく蜘蛛たちの対比がよかった。 読了日:12月15日 著者:エイドリアン・チャイコフスキー 時の子供たち (上) (竹書房文庫 ち 1-1)の感想 設定が面白い。ポストアポカリプス後の人類と知性化実験でナノウィルスで進化中の蜘蛛型生物。蜘蛛たちが内在するナノウィルスを神話化して信仰のような制御のような関係性を構築しているのが面白い。 読了日:12月09日 著者:エイドリアン・チャイコフスキー 教誨師 (講談社文庫)の感想 死刑制度の賛否はいろいろとあるがこの感想でおいておく。自分が死ぬことを日々意識している死刑囚とその心と向き合う教誨師。ベースは浄土真宗だが、それだけにとどまらない生きるとは、罪とは、罰とは、贖罪とは、死刑囚と教誨師の会話や寄り添う姿勢の中でそれぞれの葛藤が見えてくる。作者への信頼感が伝わるような言葉から長く丁寧な取材がよくわかるし、それをうまく構成、表現している。 読了日:12月04日 著者:堀川 惠子 新しい時代への歌 (竹書房文庫 ぴ 2-1)の感想 コロナ直前(2019年)に書かれたとは思えないぐらい現状の閉塞感を彷彿させる描写が素晴らしい。リモートワークで安全を確保しながら分断される人々。その分断に反発するリアルな生活を大切にする人々。その二人が音楽を通じてめぐりあい、反発して、新しい社会の形を模索する物語。とても面白かった。 読了日:12月03日 著者:サラ・ピンスカー 青の女公 (集英社オレンジ文庫)の感想 女性の一代記だった。とても現代的な話だけど、雰囲気が良かった。もっと詳しく書いてほしい気もするが、作者のテイストが好きなので他の作品も期待。 読了日:11月29日 著者:喜咲 冬子,月子 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマの感想 とても面白くて一気読みしてしまった。陸軍の船舶輸送が明治にどんな位置づけで始まり、昭和初期まで田尻少将らの創意工夫で発展したか、それに合わせて広島・宇品の変遷がよくわかった。江波の埋め立て、三菱の工場設立も宇品と繋がっていた。南進政策の紆余曲折、南方戦線の苦しみ、さらに原爆への対応と、著者の取材力がいかんなく発揮されている。ときどき筆がのりすぎと感じられるが間違いなく力作である。日中・太平洋戦争の敗北が日露戦争のためでは、成長のない自分を親のせいにしているようで質が悪い。自衛隊の輸送能力が心配になる。 読了日:11月27日 著者:堀川 惠子 ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2)の感想 少し偏りがある気もするが未読の作品も多く楽しめた。好みは「人間たちの話」「本の背骨が最後に残る」「すべてのアイドルが老いない世界」「あれは真珠というものかしら」「いつかたったひとつの最高のかばんで」最後の「循環」は好みと別に昭和~平成の個人史をSFとしてのフレームに昇華した良作だった。 読了日:11月25日 著者:大森 望 ヴィンダウス・エンジン (ハヤカワ文庫JA)の感想 SFとしての設定のわかりやすく、文章もよみやすく、エンタメとして楽しめた。なんとなく人物や提示されるヴィジョンが軽い印象がするのがもったいなく感じた。 読了日:11月22日 著者:十三 不塔 レイヴンの奸計 (創元SF文庫 リ 2-2)の感想 暦法などの話はいったん背景にひいて、政治的な個人的なやりとりが中心だった。最後に復活した(というか消滅してなかった)人物が好きだったので、個人的には嬉しかった。 読了日:11月17日 著者:ユーン・ハ・リー ナインフォックスの覚醒 (創元SF文庫)の感想 暦法やフォーメーション本能の設定がとても面白い。ディレイニーを思わせる魔術的数学による科学文明のイメージにわくわくした。その中で主人公のチュリスのたくましさが印象的だった。 読了日:11月10日 著者:ユーン・ハ・リー 痛風の朝の感想 皆さん痛そうなのになにか楽しげなのが不思議だ。だからなってない女性たちからの恨めしげなセリフが印象的だった。 読了日:11月03日 著者: ネットワーク・エフェクト: マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫)の感想 前作に引き続き内省的な性格の主人公の描写が愛らしい。それでも周囲に感情を表すようになってきたが、それでも一筋縄でいかないところがよい。ARTはほんとうにいい意味でARTだった。 読了日:10月16日 著者:マーサ・ウェルズ,中原尚哉 台湾・少年航空兵―大空と白色テロの青春記の感想 とても濃くて熱い話が多い面白い自伝だった。作者が日本占領下の台湾で育ったため、戦前の日本に対してまず好意的に描写される。しかし日本人だから一律高評価ではなく、個人に対して是々非々で判断していて、とても芯の強い人物であることがわかる。少年航空兵として教練から終戦の混乱をへて台湾に帰郷、国民政府の逮捕と波瀾万丈の人生は、ぜひ映画にしてほしいと思うぐらいだ。その時代の一市民が感じた人々や政府の様子が鮮やかに描写されていてとても印象的だった。 読了日:10月09日 著者:黄 華昌 零號琴 下 (ハヤカワ文庫 JA ト 5-5)の感想 構築された世界観がとても美しい。ポップカルチャーと神話を組み合わせることでストーリーもダイナミックになって楽しめた。 読了日:09月22日 著者:飛 浩隆 零號琴 上 (ハヤカワ文庫 JA ト 5-4)の感想 作者の小説を読むのは久しぶりだが、もう少し硬質な文章のイメージだったので、意外と読みやすくて驚いた。しかし、描写されるイメージは期待どおりの美しさで、登場人物たちがもつ危うさと相まって、どこか危険で退廃的な雰囲気を感じた。 読了日:09月16日 著者:飛 浩隆 BL塾: ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか? (王様文庫)の感想 本屋でみかけて最近のBL論はどんな感じなのだろうと思って読んだ。いろいろな傾向の作品や流行が紹介されていて、ジャンルが総花的に発展している感じがした。 読了日:09月14日 著者:アニメイトタイムズ編集部 石橋 悠,阿部 裕華 挑発する少女小説 (河出新書)の感想 登場する作品の原作を読んだことはあまりなかったので、ほんの紹介としても楽しめた。現代的なジェンダー観からの批評は賛否あるだろうが、著者の20年来の味なので個人的には好ましい。それにどの本も読んで楽しめそうだと思う。 読了日:09月08日 著者:斎藤美奈子 帝国という名の記憶 下 (ハヤカワ文庫 SF マ 13-2)の感想 海外の小説では詩や詩的表現をモチーフとしている作品は多いように思える。その中でSFで日本語訳される作品はあまり外れがないのではないかと個人的には思っているのだが、本作品もそれの仮設を補強してくれる。政治劇から一転軍事的な危機が訪れる中でも、帝国の人々は文化に固執したり、逆に文化を捨てたりする様子が興味深かった。そのうえでキーとなるテクノロジーが実は未解決のままな部分もあり、続きも期待できそうな気がする。 読了日:09月06日 著者:アーカディ・マーティーン 帝国という名の記憶 上 (ハヤカワ文庫 SF マ 13-1)の感想 銀河帝国といってもスペースオペラといった雰囲気ではなく、むしろ宮廷政治劇といった印象。訳の巧みさもあると思うが、国や階級、職業を表す言葉や、出来事にに反応する主人公の感情表現がとてもセンスがあってよい。田舎のステーションが帝国にもつ憧れと恐れ、憎しみといった部分が文化的な優雅さの表現と相まって美しい世界観が構築されていると思う。 読了日:09月03日 著者:アーカディ マーティーン 八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)の感想 再読。一昨年読んだのだが読書メーターに登録を忘れていたらしい。ドイツ東部戦線での挽回から、西部戦線の展開点であるマルヌの戦いまでを、ドイツ軍、フランス軍の幹部たちの動きをドラマティックに描いている。フランスのジョフルのふてぶてしさが憎らしいのに頼もしく感じられてしまう。最後、これから始まる凄惨な塹壕戦とは対象的な希望に満ちた終わり方も皮肉に感じられた。 読了日:08月27日 著者:バーバラ・W・タックマン 八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)の感想 再読。一昨年読んだのだが読書メーターに登録を忘れていたらしい。第一次世界大戦の初頭で各国、特にドイツ、フランス、イギリスの政治・軍の首脳がどういった考えやポリシーで動いていたか、ドラマティックに描かれている。どこの国にしても当初計画からと実践でのズレを適切に判断して軌道修正するのがいかに難しいかよく分かる。そういった意味では第一次世界大戦の勃発は必然だったと言える。 読了日:08月20日 著者:バーバラ・W・タックマン 女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち (幻冬舎新書)の感想 世界で活躍している女性政治家の紹介。あまり深い分析ではなく、他の政治家との関係性から捉えようとしている感じが著者らしい。 読了日:08月12日 著者:ブレイディ みかこ それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)の感想 文庫版で再読。あとがきが公文書管理法の日付になっていることが今となってはもの悲しい… 読了日:08月10日 著者:加藤 陽子 第一次世界大戦 (ちくま新書)の感想 再読。14年8月にベルギーに入ったドイツ兵士たちは18年8月の最悪の日をどのように迎えたのだろう。そもそもどれくらい生き延びられていたのか… 読了日:08月08日 著者:木村 靖二 マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫)の感想 下巻も登場人物の魅力が溢れていた。ミキとの関係性へのイライラは単純なものでないことをきちんと割り切らずに描写されているのがよかった。主人公は無敵ではないが、だいぶ戦闘は無双しているような気がした。それでもラストバトルで敵が強いときの自己評価の高まりなど愛らしかった。 読了日:08月06日 著者:マーサ・ウェルズ マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫)の感想 感情を持って職務に忠実な機械知性の物語はもともと大好物だ。知性と感情の混合の仕方がこれまでの作品とは異なる感じがとても面白かった。人間関係が煩わしいからヘルメットやドラマ視聴に耽溺する仕草がとても愛らしかった。 読了日:08月04日 著者:マーサ・ウェルズ 空よりも遠く、のびやかに (集英社文庫)の感想 少しいろいろと詰め込みすぎた感じがした。作者のフィールドの幅広さとそこから導き出されたビジョンはとてもいいと思うのだが、そこ至る過程がかなり跳躍しすぎていて、ちょっと唐突な感じがしてもったいなかった。地学というフィールドは歴史と科学の融合だからとても面白いと思うし、身体感覚として崖を登ることが時間を移動することと重ね合わせることもいいアイディアだと思うだけに、もう少し丁寧にゆっくりストーリーを展開してほしかった。 読了日:08月01日 著者:川端 裕人 ウルトラ図解 パーキンソン病の感想 病気の説明はわかりやすかった。 読了日:07月10日 著者: 三体III 死神永生 下の感想 最後までとても楽しめた。最後のとてもSFらしい展開は90年代のSFっぽさを感じた。また主人公の全体への責任感の強さは中国の宿命論的な物語とのつながりも感じた。ストーリーのダイナミズムと投入されているアイディアのスケールの大きさがとても贅沢で、すばらしい作品だった。 読了日:07月09日 著者:劉 慈欣 風に乗って、跳べ 太陽ときみの声 (朝日中高生新聞の人気連載)の感想 シリーズ第3弾。視覚障害といっても障害の段階や性別、国籍など様々なバリエーションがある。その区別はいわゆる健常者をふくめてきれいに線引できるものでなく、グラデーションになっているというのを考えさせる内容だった。それでもやはり障害のある女性の生きづらさは想像するしかないけど、自分に選択肢があると思えるような社会になっていけばいいと思う。 読了日:06月27日 著者:川端裕人 太陽ときみの声~明日のもっと未来へ~ (朝日中高生新聞の人気連載小説)の感想 良いジュブナイル小説でした。銀河にキックオフの登場人物が出てくると思わず嬉しくなってしまった。 読了日:06月27日 著者:川端裕人 太陽ときみの声 (朝日中高生新聞の人気連載小説)の感想 朝日中高生新聞に連載されたブラインドサッカーをテーマとしたジュブナイル小説。主人公の視力に問題がでてくるところの段階の描写に現実感があった。作者のその後の色覚の本を考えるとしっかりと取材して書かれているような気がする。ストーリーとしてはやや唐突に明るい展開になってしまうところは気になったが、悩んだりするところは共感できたりして楽しめた。 読了日:06月26日 著者:川端裕人 パーキンソン病 (患者のための最新医学)の感想 パーキンソン病の概要を網羅的に説明してある。後半のリハビリ運動や生活補助のための器具など具体的な説明が参考になった。 読了日:06月26日 著者: 三体III 死神永生 上の感想 ダイナミックなストーリー展開がとても面白い。中国のSF作品にはどこか宿命的というか、悲壮感が漂う気がしているが、それは科学は進歩して力は増大するが人間(や知性体)は変わらないという諦念から来ているような気がする。日本のSFだとそこまで諦念を感じることがないので、やはりテイストの差はあるのだなと思う。 読了日:06月24日 著者:劉 慈欣 ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話 (ele-king books)の感想 二人の女性がコンピューターの業界に踏み入れるまでの苦労や感情が生き生きと描かれていて呼んでいて応援してくなった。特にジャンプ問題はプログラムでよくある記述したコードだけを見ていては解決できず、システム全体の流れを俯瞰することで解決できる問題で、とても共感できた。そこで安易に解決方法を提供しない周囲もよかった。ところどころアメリカで生きるにはどれだけ前向きな考え方が必要なのかと疲れる感じがするところは気になった。それでも明るい雰囲気はとてもよくて自分もそういった感じになれたらと羨ましく感じた。 読了日:06月19日 著者:ソフィー ハウザー,アンドレア ゴンザレス なぜかミスをしない人の思考法 (知的生きかた文庫)の感想 思考法というより教訓を集めた印象。紹介される事例は面白かった。 読了日:06月07日 著者:中尾 政之 熊本県の歴史 (県史)の感想 1999年と少し古い本で西南戦争以降の現代史は弱く感じた。古墳時代~戦国までの歴史はよくまとまっていて、菊池氏、阿蘇氏を中心とした流れがよくわかった。 読了日:06月02日 著者:松本 寿三郎,工藤 敬一,猪飼 隆明,板楠 和子 さみしくなったら名前を呼んで (幻冬舎文庫)の感想 図書館で借りた単行本で読了。作者の描く女性の生き生きとした感情の描写がとても好きだ。喜怒哀楽、愛憎、無関心さや冷淡ささえ、とてもシャープでビビッドな印象を受ける。一番好きなのは「ケイコは都会の女」。4ページとちょっとで地方(では全然ないけど、自己認識ではそうなっている)から都会にきた女性の気持ちがスパッと切り取られている。 読了日:05月18日 著者:山内 マリコ おっぱいとトラクター (集英社文庫)の感想 訳者の妙もあるのだが、会話が小気味よく楽しんで読めた。「おっぱいとトラクター」というのは日本人男性でいうなら「美少女とロボット」のようなもので、老いた父親がその欲望のままに行動するのを娘の姉妹が呆れるというコメディが面白い。さらに登場人物それぞれに政変や戦争の辛苦や波乱の経験があることが、明確な言動や描写ではなく主人公の感情のフィルターを通してじんわりと感じられることで深みを増していると思う。 読了日:05月15日 著者:マリーナ・レヴィツカ 中古典のすすめの感想 1960年代~90年代はじめのベストセラーや話題の本からに対する現代にむけた紹介と評価。それぞれの本の紹介はわかりやすくちょっと気になる本も多かった。著者のスタンスはずっと昔から変わらないので、その評価軸が合わない人は逆に参考になるかもしれない。 読了日:05月05日 著者:斎藤美奈子 家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ (角川新書)の感想 あえてだと思うが挑発的なタイトルだと感じたが、そのぐらい作者の長年の怒りを感じた。法治が有効なのは市民社会だけで、国家間や国家権力の介入、家庭内では無法地帯というのはよくわかる。日本では学校や職場などの共同体でも法治より人治が優先されてきたが、戦後民主主義のなかでモラルやマナーのアップデートで少しずつ改善されてきたはずだ。被害者救済のために加害者が理由を説明することが最低限の加害者支援の目的というのはなるほどと思った。 読了日:05月03日 著者:信田 さよ子 ポストコロナのSF (ハヤカワ文庫 JA ニ 3-6)の感想 日本の作家たちのコロナを着想とした短編集。コロナだからという切り口よりも、それぞれの作家が得意としている作風が現れている感じがして面白かった。個人的には「バリア水」のネーミングはうまいと思った。巻末のSF大賞の話にはぐっときた。 読了日:05月02日 著者: 2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)の感想 2010年代は中国にルーツを持つ作家が英語圏で活発に作品を発表していたのだなと改めて認識した。作風としてどこか現実に対する絶望を感じされる哀愁があり、それは東洋的な諦念として通じるところがあるのかもしれない。「乾坤と亜力」、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」を対比することでどちらも楽しめた。「内臓感覚」ではどうどうとGoogleを出していて、国内作品だとなんちゃってな企業名にするだろうと思うと、現実とフィクションに対する文化の成熟度のち外のようなものを感じた。 読了日:05月01日 著者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン マルドゥック・アノニマス 6 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-23)の感想 バロットの強さが魅力的だった。ハンターも調子をもどしてきた。しかし少し登場人物が多く感じてきた。 読了日:04月30日 著者:冲方 丁 あのこは貴族 (集英社文庫)の感想 地方から東京に出てきたときの憧れと欲望、それに対する東京在住の無関心さというのはよく分かる。登場人物は誰も完璧ではない普通の人で、どこにでもありそうな出来事がおきるだけだが、当人にとってはとても深刻なことでそれを鮮やかに描くことでさまざまな問題を投げかけてくる。東京のいわゆる上流階級も地方のコミュニティもまつわる権力や金の量が違うだけで、結局は閉鎖性は相似している。そこから逃れることが文明の進歩というものだと思う。 読了日:04月29日 著者:山内 マリコ 短編宇宙 (集英社文庫)の感想 宇宙というテーマに対して科学的だったり情緒的だったりしろんな視点からの作品がつまった短編集。個人的には「空へ昇る」が一番気に入った。初めて読む作家だったので別の作品も読んでみたい。 読了日:04月27日 著者:加納 朋子,川端 裕人,寺地 はるな,酉島 伝法,深緑 野分,宮澤 伊織,雪舟 えま トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書)の感想 トラクターそのものだけでなく、その時代や社会との相互作用まで、丁寧に描かれていてとても勉強になった。特に印象深いのはウクライナの歴史的な悲劇だが、それ以外にもプレスリーと小林旭が同じトラクターの歌でつながるなどのネタも楽しめた。現代でもトラクターの操縦者に女性が少ない問題は社会的な不平等(偏見)の1つと思われるのでなにかしら政治的な制度として解決のアクションがあってしかるべきと思われる。 読了日:04月25日 著者:藤原 辰史 一度きりの大泉の話の感想 非常に言葉を選んでいるが、大変な心の傷による苦痛が伝わってくる。途中ここでもっとコミュニケーションがとれたら、これほどまでに苦しまなかったのではないかと思うところもあるが、むしろそこで言葉がです会話ができないこそ、著者は偉大な創作者たりえたのだろうと思う。 読了日:04月23日 著者:萩尾望都 筺底のエルピス 7 -継続の繋ぎ手- (ガガガ文庫 お 5-7)の感想 絶望が足りないと贅沢な感想を持ってしまった。これまでの話の中ではもっとも順調に主人公サイドの作戦がハマったのではなかろうか。それでももちろん強力な敵との総力戦は楽しめた。特に青の封じ込め方は見事だった。 読了日:02月22日 著者:オキシ タケヒコ 物語 ナイジェリアの歴史-「アフリカの巨人」の実像 (中公新書)の感想 ガーナ王国から近代あたりまではサヘル地域のイスラム化と、イギリスの進出という形でまとめられていて、とてもわかりやすかった。奴隷貿易時代にすでに植民地化が進んでいたのかと思っていたが認識違いだった。第一次大戦後のナショナリズムが台頭してからの歴史は正直混沌としていて理解が難しい。ただ北部、東部、西部の宗教や民族性の違いは、各地の権力者による対立の言い訳に使われている気がする。 読了日:02月16日 著者:島田 周平 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)の感想 第二次世界大戦のドイツ-ソ連戦線の動きを俯瞰的に説明してある。第二次世界大戦は何冊か読んでいたので戦史的に新しい知見は少ないが、コンパクトに纏まっているのはよかった。ドイツがヒトラー、国防軍、国民が共犯的に殲滅的侵攻を実行し、それに対抗するためにソ連がスターリンの恐怖的手法を総動員した逆襲によって、史上類をみない残虐な戦争が行われたことは間違いない。両国ともにその道は正義や善意で舗装されており、それは戦前の日本も同じであったと思う。現在の日本や米中にも同じ道への可能性が常にあることは意識したい。 読了日:02月08日 著者:大木 毅 推し、燃ゆの感想 最初の数ページで肉にこだわった描写に特徴があってちょっとエキセントリックな感じの作品なのかと思ったが、それはいい意味で裏切られた。肉ベースの描写が特徴でおもしろいのは間違いないが、語られる内容は(統計的には)特別ではない人の特別ではない話であった。私はそういった「そんな不幸はどこにでもある」話、しかし当人にとっては大きなイベントを扱った作品がとても好きだ。この作品のスケール感や視点はその好みにハマっていた。 読了日:02月01日 著者:宇佐見りん 理論疫学者・西浦博の挑戦-新型コロナからいのちを守れ! (単行本)の感想 以前データ分析の仕事をしているときのイベントで医療系統計のセッションをいくつか聞いたが、データ1件が一人の生死に関わっていることを考えて、取り扱いが大変そうだと思ったのを思い出した。西浦さんの学者としての矜持や胆力には感心した。それとは別にどこで誰がどんなことをいったのかよく覚えている人だという印象を持った。いろいろとぶっちゃけ話もあってとても興味深かった。 読了日:01月30日 著者:西浦 博,川端 裕人 アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門 (Next Creator Book)の感想 アニメーション制作者や批評家へのインタビュー。やはりアニメーション制作に関わる監督、作画、演出の話が面白い。対談だといろいろなアニメの具体的な話数やシーンにピンポイントに話が飛んでいくのが面白い。Flashや3DCG、撮影などの技術の進歩が制作者の年代や立ち位置によって、希望だったり断絶だったり見方が全く異なるのも面白かった。 読了日:01月25日 著者:高瀬康司,片渕須直,京極尚彦,井上俊之,押山清高,泉津井陽一,山田豊徳,山下清悟,土上いつき,土居伸彰,久野遥子,藤津亮太,石岡良治,渡邉大輔,泉信行,古谷利裕,吉村浩一,福本達也,原口正宏,吉田隆一,氷川竜介 物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)の感想 前半の物語論の概説では、物語論の発展の経緯やその分析視点などが広く網羅されていてわかりやすかった。後半の事例は多数の作品の一部分のみの分析ばかりで、どうしても浅い感じがしてしまった。 読了日:01月16日 著者:橋本 陽介 2000年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)の感想 すべての作品がレベルが高いよい短編集。個人的には「シスアドが世界を支配するとき」のネットはユートピア思想から凋落したテイストが好みだった。 読了日:01月10日 著者:エレン クレイジャズ,ハンヌ ライアニエミ,ダリル グレゴリイ,劉 慈欣,コリイ ドクトロウ,チャールズ ストロス,N・K ジェミシン,グレッグ イーガン,アレステア レナルズ 読書メーター #
by lifeforone
| 2022-01-08 12:20
| 読書
2021年 01月 09日
あけましておめでとうございます。
昨年はコロナで自宅にいる時間は長くなったが、通勤での読書時間がなくなり、代わりに料理をしている時間が多くなったため、結果的にあまり読書は捗らなかった。 一番印象に残ったのは「苦海浄土」。とにかく圧巻の描写だった。 「戦争は女の顔をしていない」も多くの女性たちの長年の思いが重層的に描写されることで、東部戦線の情景が滲み出してくるようでとてもよかった。 戦争と虚構の感想 内容を忘れていたので再読。がっつりと考えられた文章が出版されていること自体が貴重だと思った。 読了日:12月29日 著者:杉田 俊介 フットボール風土記の感想 JFL以下のリーグに所属するフットボールクラブについて、それぞれの成り立ち、現状、ビジョンを暖かい視線で紹介してくれる。メルマガ時代から著者のファンだが、けっこう有名になった今でも、著者のホームはこういったメジャーとは少し違った部分だと思う。風土記としてはフットボールのその地域らしさより、その地域のフットボール小史として面白いと思う。 読了日:12月18日 著者:宇都宮徹壱 宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)の感想 どうしても架空戦記っぽさにちょっとついていけないところがあるが、登場人物とストーリー展開自体は嫌いではなかった。 読了日:12月12日 著者:メアリ ロビネット コワル 宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)の感想 フェミニズムによる歴史改変SFだが、こうあって欲しかったという願望が強く現れすぎて、一時期の日本の架空戦記を思い出してちょっと期待したのと違う感じだった。 読了日:12月07日 著者:メアリ ロビネット コワル 「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論 (単行本)の感想 人間が色を視覚し、認識し、判断するということを、生化学レベルから社会での色覚識別能力の取り扱いまで、本当にミクロからマクロまで俯瞰しつつ身近な体験で説明してくれる。哺乳類が2色覚になり、霊長類が擬似3色覚になるなど、生化学レベルも意外性と納得感があって面白い。そういった最新の科学的知見を踏まえた上で、現在の社会での色覚検査のあり方への提言に、著者の体験に根付いた熱量が感じられる良書だった。 読了日:12月01日 著者:川端 裕人 暴君――シェイクスピアの政治学 (岩波新書)の感想 シェークスピアの物語で、権力者の横暴な振る舞いの描写について、作品ごとに分解、比較することで、複数の作品に連なる深い人物造形を分析している。権力への欲望とそれを失う不安によって、人間が狡猾さと猜疑心でどう振る舞うのかを深く考察した上で、巧みに描写されており、それは現代にも通じている。また引用されるセリフの力強さから、やはり一度はきちんとシェークスピアの劇をみたいと思った。 読了日:11月26日 著者:スティーブン・グリーンブラット コンビニ人間 (文春文庫)の感想 規範や同調圧力によって楽になる部分と苦しむ部分をむき出し描写してあり、極端な人間のはずなのに生々しい感じがした。 読了日:10月17日 著者:村田 沙耶香 ウォーシップ・ガール (創元SF文庫)の感想 内省ばかりしている登場人物の描写が個人的にはとても好みだった。設定やストーリーはそれほど大きな起伏があるわけではないが、その場面での登場人物の考えや感情の描写がよくて、しっかり引き付けられた。物語の雰囲気を考えると表紙のテイストは少し落ち着いたものがよい気がした。 読了日:10月10日 著者:ガレス・L・パウエル 『この世界の片隅』を生きる ~広島の女たち~の感想 「ヒロシマ」にまつわる5人の女性を紹介している。5人のピックアップや着眼はいいと思うのだが、もう少し踏み込んでほしかった気がする。 読了日:08月29日 著者:堀 和恵 星継ぐ塔と機械の姉妹 (電撃文庫)の感想 ソノラマ文庫っぽい懐かしさを感じた。SF的なアイディアを現在のフォーマットでうまくエンタメにしていて楽しめた。あとがきの冷却系の説明とか、作者の趣味も好みだった。 読了日:08月27日 著者:佐藤 ケイ 第五の季節 (創元SF文庫)の感想 世界観とストーリーテリングの上手さでとても楽しめた。3組の男女のペア、成人男性と少女、成人した男女、成人女性と少年の対比も意図したものであると思っていたが、実に巧みな構成と展開だった。ただヒューゴー賞よりはネビュラ賞のほうがあっていそうな気がした。 読了日:08月22日 著者:N・K・ジェミシン マンガでよくわかる 教える技術の感想 知っていることのおさらいとして読んだ。漫画でストーリーとして説明することは、視覚化することの良い例だと思う。基本的にはマニュアルベースの業務向きだが、プロセスとしてのチェックリストを作ることで応用が可能だと思う。 読了日:08月01日 著者:石田 淳 魔女の世界史 女神信仰からアニメまで (朝日新書)の感想 20世紀初頭~1970年代ぐらいの説明部分は面白かった。しかしそれ以降は影響をうけた作品の列挙しただけのは残念だった。 読了日:08月01日 著者:海野 弘 リーダー必須の職場コミュニケーション61のスキルーカウンセリング、ティーチング、コーチング、報連相の活かし方の感想 基本的には一度はどこかで習ったスキルだが、わりと体系だって説明されていて、いいおさらいになった。ただ61のスキルの粒度がバラバラなのは少し気になった。 読了日:07月28日 著者:五十嵐 仁 三体II 黒暗森林 下の感想 ダイナミックなストーリーを堪能した。解決策についてはなんとなく想像していたものがあたったので、実は結構嬉しい。最後の実に人間的な落とし所も王道SFといった感じ。大峡谷時代のエピソードがあるなら読んでみたい気もする。 読了日:07月26日 著者:劉 慈欣 三体Ⅱ 黒暗森林 上の感想 懐かしい雰囲気の良質なSFテイストを楽しんだ。作中でも言及があるアシモフや日本なら小松左京の作品と通じるものを感じた。大きなスケールとその中枢にいる人々の思考や感情、ドラマティックなストーリー展開ががっつりと組み合わさっている。前巻と比較すると異星人の描写や人類内でのやりとりなどに人間味を描写が強くなってきた感じがする。反対に未知への恐怖や憧れといった魅力は少し弱まってきた気がするが、それがなくても十分面白かった。 読了日:07月21日 著者:劉 慈欣 科学の最前線を切りひらく! (ちくまプリマー新書)の感想 それぞれとても興味深いテーマで面白かった。特に脳科学の研究室で錯視のプログラムが必修課題というのはとても興味深い。それぞれもっと深堀りしてくれればと思わされる内容だった。 読了日:07月16日 著者:川端 裕人 我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)の感想 アジアにおける人類史について、現在研究中の仮設を含めてわかりやすく説明してある。最初の人類史の歴史区分が日本と世界でどのように異なるかの説明なども初めて知ったが、なるほど確かにと思った。少し取材対象に共感しすぎるのはご愛嬌だが、原人の生活をイメージしたり、研究のどこにロマンがあるかなどの語り口はとてもよかった。 読了日:07月13日 著者:川端 裕人 マルドゥック・アノニマス 5 (ハヤカワ文庫JA)の感想 バロットとアビーの関係、バロットの過去の受容は展開としてはよくあるものだが、描写がしっくりしていてよかった。敵たちのやせ我慢する男たちの描写やクライシス・サスペンスっぽい雰囲気はわかるが、描きたいイメージが先行しすぎてちょっと作者の悪い癖がでている感じはする。 読了日:06月26日 著者:冲方 丁 有害超獣 極秘報告書 -Toy(e) Art File-の感想 独自の世界観と絵のタッチがとても好みだった。【追記】小川一水の紹介で知って、絵に添えられたテキストのセンスが少し古いスタイルに感じられるところに興味を持って購入。区の地図や四課の設定を考えているとき、きっと作者はとても楽しかったのではないかと思えた。それでもこれだけの枚数の作品を仕上げるのは大変だろう。その楽しさと苦労の兼ね合いの中で磨かれてきたの、このありそうでなかった美しく恐ろしい超獣たちだと思う。 読了日:06月20日 著者:Toy(e) 買春する帝国: 日本軍「慰安婦」問題の基底 (シリーズ日本の中の世界史)の感想 基本における性売買制度を主に官公庁(戦前は軍を含む)の資料を元に、法令、業態、そして統計を説明している。この淡々とした統計の数値が、実際にそれだけの女性が苦しんでいたと考えると、そら恐ろしい。例えばP.144 表15、「1939年日本国内の性売女性286,309人、性買男性のべ33,029,826人(内務省警保局『警察統計報告』)」。現在もネットでアダルト動画が溢れており、女性が誤解なく自発的に出演したものはほぼないと思うが、我々は必要悪と受けれ入れている。日本だけではないからと看過していいとは思わない。 読了日:06月13日 著者:吉見 義明 2010年代SF傑作選2 (ハヤカワ文庫JA)の感想 未読もかなりあった。どちらかというと1巻のほうが好きということは、やはり自分が歳をとったということなんだろう。最近デビューしてきた作家たちとのスキームやコンテキストのズレは結構感じる。それでも読んでて楽しい作品はあって、特に「従卒トム」は良かった。 読了日:06月02日 著者: ドゥ・ゴール (角川選書)の感想 王妃の離婚以来、作者の語り口の少し荒っぽい語り口がとても好きで、この本もまず文章を楽しく読めた。WWIIの歴史書はイギリス=チャーチル視点のものを多く読んでいたので、ドゥ・ゴールは正直金魚のふんっぽい扱いだった。偉大なるフランス、民主的かつ中央集権な政治体制というこだわり続けた姿勢がよくわかった。Dデイ直前直後にローズベルトとアイゼンハワーの間にすっと入るあたり、継続が強運につながった印象がある。政党政治や冷戦の対立の中でいかに独立した軸を持てるかは現在の政治、外交にもつながる課題だ。 読了日:05月10日 著者:佐藤 賢一 馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでくださいの感想 とても楽しく読めた。いろいろとありのままの現実をむき出しにして指摘してくれる点が小気味いい。著者本人は馬鹿ブス貧乏ではないと思うが、微妙にスピリチュアルや陰謀論にハマっている感じがするところも人間らしくていい。「長いまえがき」の最後の2つが好き。「死ぬ瞬間に(中略)この人生ゲームを捨てずに逃げずによくやってきたね!健気だったね!と自分の頭がナデナデできるかがポイントだ」「この世に救済はないしユートピアは実現しなと思っている。なのに、人類は匍匐前進ながらも「理想」に向かっているとも信じている」 読了日:05月05日 著者:藤森 かよこ エピデミックの感想 単行本を持っていたので再読。小説としてスコいぎこちないところはあるが、作者が読者に伝えたい感染症への医学、特に疫学がもつメカニズムの魅力と、それを実現するために危険だけでなく精神的な苦痛も耐える医療従事者の苦闘がよくわかる。コロナ対策の真っ最中に読むと、このときT市の状況が全国、全世界で発生していることがよくわかる。新型コロナはこのエピデミックレベルで封じ込めができなかったケースと言える。(最初検索で文庫しか表示されなかったのでそちらで登録したが、再検索で単行本が表示されたので文庫は削除し単行本で再登録) 読了日:05月01日 著者:川端 裕人 2010年代SF傑作選1 (ハヤカワ文庫JA)の感想 半分ぐらいは既読だった。大卒ポンプの馬鹿らしさはとても好き。神林長平は久しぶりに読んだが、味わいは変わらずにちょっとモダンになった感じがしてよかった。 読了日:04月30日 著者: 女たちのテロルの感想 この3人は「女性」というくくりすらはねつけるだろう。普通の人は壮絶と表現する生き様だが、本人はこの生き方が普通であり、当然と思ったから生きただけであろう。現代社会で日本人が享受している自由と権利は、人類文明史上の諸活動によってルールが変更され獲得されてきた。ルールの変更は既存のルールの枠内では絶対に実現できず、ルールを破った人々の直接的間接的影響(フランス革命、公民権運動)が必要であった。自分を決めるの自分であり、自分の選択が社会の選択につながる意識が必要である。ただその意識は人類にはまだ早すぎるようだ。 読了日:04月12日 著者:ブレイディ みかこ ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA)の感想 作者の前向きな娯楽性が前面にでていて楽しめる。気楽に読むのが一番だが、他の作品での表現や印象と比較すると、作者が蓄積してきた時代性や規範が少しずつ現れているのがわかるのも興味深い。それでも作品の根幹としては人類や知性への希望や祈りの姿勢があり、それが前向きなエンタメに通じていると思う。 読了日:04月03日 著者:小川 一水 新装版 苦海浄土 (講談社文庫)の感想 絶句… 読了後に思いついた感想はまずそれだった。読んでいる間、言葉を一つも取りこぼすまいと、息をとめるほど集中した本というのは久しぶりだった。郷里の言葉というのはあるにしても、心の深いところにとても響いてきて、全身で憧憬と悲嘆を感じてしまった。 読了日:03月26日 著者:石牟礼 道子 戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)の感想 知人から内容を聞いていたし、漫画版も少し内容を読んでいたが、やはり内容の重々しさがズシンときた。これは語っている人の言葉に共感している著者の姿勢がにじみ出ていることもあるだろうし、また語りたい人たちが無数にいるという数の重さもある。戦場で実際に戦闘を行った女性より、料理、通信などの補助的業務で参加した女性の語りのほうがより深く印象に残った。 読了日:03月15日 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーの感想 昨年6月に読了したが登録を忘れていたので再録。息子の成長を通して描く英国、日本、世界の社会批評。ブログのころから知っているが息子さんも健やかそうでなにより。ワールドカップの話より、ニーハオのときの息子さんを自慢したいけど、自重しなきゃ(できてない)感じが微笑ましい。水泳の話が印象深い。 読了日:03月07日 著者:ブレイディ みかこ この世界の片隅で (岩波新書 青版 566)の感想 こうの史代の「夕凪の街 桜の国」「この世界の片隅に」は名作だと思う。本書を読んで、その登場人物や物語は決してフィクションではなく、広島で実際に存在したことだということを改めて強く思った。率直に言って現実の人々の言葉のほうが力強く、心迫るものがあった。しかしこのままでは現代の人々には受け取るときに疲れてしまうと思うので、適切な作品化されたことはよかった。それでも本書にあった戦後の被爆者支援が連帯と運動によって獲得されたことはなかったことにされてしまうので、それは別途作品化が望まれる。 読了日:02月15日 著者: おうむの夢と操り人形 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)の感想 年刊日本SF傑作選シリーズは全てではないが、かなり多く読んできたので、終了は残念。2019年の日本SFの大豊作はこのシリーズを始めとした編集者、出版社からの働きかけの動きが大きな貢献をしたと思うので、その功績と苦労に感謝したい。「レオノーラの卵」「検疫官」「グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行」「サンギータ」が特に楽しめた。「サンギータ」は去年NHKでクマリのドキュメンタリーを見たので、映像がありありと浮かんできた。 読了日:02月09日 著者: 真昼の悪魔〈下〉―うつの解剖学の感想 読了していたが、登録を忘れいたようなので。感想は上巻にまとめて記載してる。 読了日:01月06日 著者:アンドリュー ソロモン 真昼の悪魔〈上〉―うつの解剖学の感想 うつ病に罹患した小説家による、うつ病経験者やうつ病が多い国や地域へのインタビュー、調査資料を元にした症状や治療を説明した本。かなりの大著で上巻だけでも読むのに相当時間がかかった。うつの症状がさすが小説家という描写で表現されており、胸に迫るものがあった。情報が少し古い(原著は2001年でSNRIもまだ未承認薬)のと、うつ病以外の精神病全般、とくに依存症の話が多いので、やや散漫な印象もあるが、それぞれのエピソードが面白く視点も興味深いものが多い。カンボジアの美容によるメンタルケアの話が特によかった。 読了日:01月06日 著者:アンドリュー ソロモン バルカン―「ヨーロッパの火薬庫」の歴史 (中公新書)の感想 バルカン半島の歴史だが、基本オスマン帝国の衰退以降の歴史となる。帝国支配で民族や宗教を意識しないモザイク状に分布して生活していた人々が、帝国の衰退と列強の進出、民族主義活動などによって、いかに争いに巻き込まれたかという説明になっている。本書では地域の暴力性がその特異な歴史のためやむを得ないと主張しているように私には感じられた。個人的にはそれは贔屓目で、民衆が意識が排外主義でしかまとめられない教育と政治の問題だと思う。 読了日:01月03日 著者:マーク・マゾワー 読書メーター #
by lifeforone
| 2021-01-09 20:22
| 読書
2020年 01月 07日
明けましておめでとうございます。
近年恒例となっている年始の読書録の更新です。 昨年は体調の影響などもありあまり本は読めませんんでしたが、夏場に第一次世界大戦関連の書籍を多く読むことができて、20世紀初頭の欧州の歴史に詳しくなりました。 ちくま新書の「第一次世界大戦」はコンパクトだが一貫した視点で俯瞰できていて入門としては最適だと思います。 「天冥の標」(小川一水)の最終巻が年間ベストで間違いないのですが、シリーズで17冊もあるのでオススメしにくいです。 単著では「奥のほそ道」(リチャード・フラナガン)の品のない中年男性の遍歴が第二次世界大戦の捕虜収容所とつながる味わい深さが素晴らしかった。 ビット・プレイヤー (ハヤカワ文庫SF)の感想 イーガンの作品は意識と宇宙の原理の両方をとてもうまく料理する作家だが、個人的には意識よりの作品のほうが好きだ。だから最初の「七色覚」がとても好みだった。 読了日:12月10日 著者:グレッグ イーガン 機械学習スタートアップシリーズ これならわかる深層学習入門 (KS情報科学専門書)の感想 直前にわけがわかる機械学習を読んでいたので、この本の数学的な展開についていくことができた。ところどころ数学的な上から目線なコメントが気がつくが、最近の実践ではどういう技法や課題があるのかの具体的に説明があってよかった。 読了日:11月30日 著者:瀧 雅人 わけがわかる機械学習 ── 現実の問題を解くために、しくみを理解するの感想 久しぶりに数式を展開して確認しながら読み込んだ。付録の高校数学の復習からきちんと統計学を進めていけるとてもよい本だった。 読了日:11月30日 著者:中谷 秀洋 リラと戦禍の風の感想 第一次世界大戦で人々とその影に生きる魔物の物語。その時代、国、階層の人たちの行動や考え、感情の描写がよく、容易に理解や共感しやすかった。戦争や圧政などの人類の愚かさ、そんな愚かさを超克したい理想、政治や主義とは別に日常生活の苦しさとそこで生まれる愛、そういったマクロ、ミクロのバランスがとてもよいと思った。作者自身の筆が滑りすぎないように抑制的に書かれている感じがして、それが冷静さをうまく表しているように思えた。 読了日:10月13日 著者:上田 早夕里 精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへの感想 生産技術の精度向上の歴史書。技術自体については概念的な説明が多く、あまり具体的に踏み込まれてなくて、その点はちょっと期待はずれではあった。ただ、その技術が登場した背景や関連する人物のエピソードは興味深いものが多く、読み物としては楽しめた。ちょっと著者の英国びいきと最後のほうで日本人として照れくさい話が唐突に入ってくるのが気になるが、それも含めてエピソードはどれもよかった。原著が2018年、さらに訳者が2019年前半の動きまで訳注を入れているため、最新情報までキャッチアップいている。 読了日:10月09日 著者:サイモン ウィンチェスター なめらかな世界と、その敵の感想 6作中、3作が既読だったが、気がついたのは1作だけだった。どれもレベルの高い短編で楽しめた。アンソロジーと違って個人短編集だと作家性が強く現れていてとてもよい。「シンギュラリティ・ソヴィエト」が一番印象に残った。 読了日:09月06日 著者:伴名 練 ハイウイング・ストロール (ハヤカワ文庫JA)の感想 ソノラマ文庫版を持っているが、ハヤカワ再販版で再読。熱い少年の成長譚としてとても好き。個人的にはティラルの描写にとても好感を持っている。 読了日:08月30日 著者:小川一水 群青神殿 (ハヤカワ文庫JA)の感想 ソノラマ文庫版を持っているがハヤカワから再版で加筆修正が多いようなので再読。修正部分を逐次確認はしないが、読後感はあまり変わってない。私が小川一水という作者を初めて知った作品で、それ以降デビュー作から最新作まで商業出版されているものはすべて追っているので、なんだかそちらの感慨のほうが大きい。戯れの描写はこの頃からの試行錯誤がまだ続いている感じだ。 読了日:08月29日 著者:小川一水 疾走! 千マイル急行 下 (ハヤカワ文庫JA)の感想 ソノラマ文庫版を持っているが再読。作者の現実とフィクションへの前向きな捉え方がとてもよく表現されたジュブナイルだった。この姿勢は天冥の標まで貫かれていて、私は大きな信頼を寄せている。 読了日:08月27日 著者:小川 一水 疾走! 千マイル急行 上 (ハヤカワ文庫JA)の感想 ソノラマ文庫版を持ってるが、再読。2019年にハヤカワから再販される中では一番新しいはずだが、一番古めかしい感じがしたのは、やはりジュブナイル要素が強いからだろうか。 読了日:08月26日 著者:小川 一水 オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書)の感想 オスマン帝国の成り立ちから興隆、繁栄、そして衰退した末期に第一次世界大戦で欧州列強になぜあんなに軽んじられていたのかまで、とてもよくまとまっていた。イスラム教視点での帝国の位置付けや解釈は「イスラームの世界」を少し前に読んでいたが助かった。現在のバルカン半島や中東情勢に繋がる部分が多々あり、大変勉強になった。 読了日:08月20日 著者:小笠原 弘幸 オープンダイアローグとは何かの感想 図書館でたまたま目に入って気になったので読んでみた。オープンダイアローグについては初めて知ったが、フィンランド西ラップランドでの成立の経緯、理論的背景、実際の臨床事例などわかりやすく説明してあり、とても勉強になった。言語が現実を規定するポストリアリズムと、継続的治療体制を維持できる医療制度が、効果的に組み合わさっていると感じた。しかし、日本では本音と建前のように会話の効果が非常に限定的なので、他の本で国内事例を確認したい。 読了日:08月07日 著者:斎藤環 35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)の感想 著者の経験から仕事術の紹介。気になったこつは「初速が大事。3ヶ月のプロジェクトなら最初の2週間、2週間なら3日ぐらいで、最終仮説までたどり着く。」「初期はマネージャー自身が同僚などにヒアリングして一兵卒として率先する。しかし部下には伝えず、机の中に持って意見を引き出してまとめ役として権限委譲していく。自分の思考と部下の思考をくっつけていくブレインジャック。」 読了日:07月22日 著者:山本 真司 巨神降臨 下 (創元SF文庫)の感想 大団円。最終的に親子喧嘩になってしまうのは作者がやりたかったことだとは思うのだが、もう少しスケール感にあった盛り上がりを期待していた。 読了日:07月20日 著者:シルヴァン・ヌーヴェル 巨神降臨 上 (創元SF文庫)の感想 家族と異星人との関係に話をフォーカスしたためか、話のスケールと語り口にギャップを感じた。 読了日:07月18日 著者:シルヴァン・ヌーヴェル 奥のほそ道の感想 最初の主人公の破綻した生活の部分が読みにくいが、途中から本格的になる捕虜収容所の様子、そして戦後のそれぞれの生き様を踏まえて読み直すと、これが主人公の人生であったのだとじんわりと感じられるようになった。収容所や戦後の日本軍人の描写も違和感がなく、朝鮮人軍曹も含めて多面的な描写をした良い小説であった。 読了日:07月14日 著者:リチャード・フラナガン 三体の感想 評判になるのも納得の面白さだった。SFとしての着想やミリタリーとしての駆け引きも見事ながら、描かれる世界の重厚さ、息苦しい雰囲気がとてもよかった。 読了日:07月12日 著者:劉 慈欣 ヒト夜の永い夢 (ハヤカワ文庫JA)の感想 キャラクターも設定も語り口もコミカルなのに、SF的なビジョンもしっかり持っていて、とても楽しめた。粘菌から因縁への着想とつながりがとてもよかった。 読了日:07月10日 著者:柴田 勝家 アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)の感想 百合成分は全体的に抑えめ、というかむしろ中性的な作品が多い気がした。個人的には百合にそれほど魅力を感じてないので、むしろ読みやすくてよかった。小川一水のエンタメ性が最高だった。「彼岸花」「色のない緑」も好みだった。 読了日:07月09日 著者: イスラームの歴史 - 1400年の軌跡 (中公新書)の感想 イスラム教の誕生から9.11直前までの流れを概観した一冊。基本的な考え方として、イスラム教では政治、生活、歴史すべてが宗教的な意味合いを持つこと、もともと少人数集団での共和的な理想であることなどの基本の考え方が繰り返し説明されるのでわかりやすい。その中で西洋文明との接触から始まる抑圧と反発などの複雑な流れで苦闘していることもよく分かる。 読了日:07月08日 著者:カレン・アームストロング ディナモ・フットボールの感想 旧共産圏でうまれ、未だに続いているところもある、ディナモと冠したフットボールクラブの歴史と現在の紹介。2002年の本なので少し古いが、各国の事情はあまり変わってないような気がする。内務省・秘密警察のクラブとして、権力者の協力を得つつも、民衆からは反発を受けていたクラブが、共産圏崩壊後、どうなっていったのかの過程を含めて面白い。各国の国民性への洞察が著者が若いころの文章のためか、少し浅い気もするもが、東欧のけだるさがただよってくるよい紹介だと思う。 読了日:06月30日 著者:宇都宮 徹壱 図説第一次世界大戦 下 1916-18―戦略・戦術・兵器詳解(歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)の感想 第一次世界大戦の各戦線での動きがよくわかる良書で、最後の武器の技術や各国の経済力についての変遷でわかりやすかった。 読了日:06月30日 著者: 〔戦略・戦術・兵器詳解〕図説 第一次世界大戦 <上>の感想 第一次世界大戦での各戦線での軍事的な行動と、その原因と結果が俯瞰的かつ、適度な詳しさでわかりやすく説明してあり、とても理解が進んだ。 読了日:06月30日 著者: 男性は何をどう悩むのか:男性専用相談窓口から見る心理と支援の感想 男性専用相談窓口の運用経験から、男性がどんな悩みをもっているのかとその対応方法を紹介している。やはり男性は弱みを見せるのが苦手で、コントロールできてない状況=無能とみなされる恐怖が一番の悩みのようである。しかしそれ以外にも典型的なものも例外手なものも含めて多くの事例が紹介されており、とても貴重な現場報告だと思う。 読了日:06月30日 著者: 折れそうな心の鍛え方 (幻冬舎新書)の感想 著者が役に立った経験則が紹介されており、いくつか共感できるものもあった。 読了日:06月30日 著者:日垣 隆 自分を受け入れるためのマインドフルネスの感想 呼吸法、瞑想法の紹介でちょっと着たいと違った。 読了日:05月31日 著者:伊藤 翠 折れない心をつくる シンプルな習慣の感想 著者がいろいろな療法を経験した上で、効果が実感したものをまとめたものだと思う。認知療法のカラム法や自動思考を考え方をベースに、それを自分の頭の中で適用しやすいクセを作っていくというのは有効だと思う。 読了日:05月31日 著者:渡部 卓 第1次世界大戦(下) 兵士と市民の戦争の感想 第一次世界大戦について包括的に説明されていて内容は十分だった。しかし私の読み方の問題ないのか、ページ内での構成がよくなく、説明の途中でコラムが入ってしまい、読みにくく感じた。 読了日:05月31日 著者:J.M. ウィンター 第1次世界大戦 (上) (20世紀の歴史 13)の感想 第一次世界大戦について包括的に説明されていて内容は十分だった。しかし私の読み方の問題ないのか、ページ内での構成がよくなく、説明の途中でコラムが入ってしまい、読みにくく感じた。 読了日:05月31日 著者:J.M. ウィンター 「空間」から読み解く世界史: 馬・航海・資本・電子 (新潮選書)の感想 空間という切り口で世界史を説明しようという試みはとても興味があった。ただ、移動手段でしか空間を見ておらず、各文明、国家、民族の距離感や地政学も絡めてほしかった。 読了日:05月31日 著者:宮崎 正勝 第一次世界大戦 (文庫クセジュ)の感想 第一次世界大戦について知りたくなって、いろいろ読み込んでいる。視点がちょっと独特な感じもするが、エピソードのピックアップも面白くてよかった。 読了日:05月31日 著者:ジャン=ジャック ベッケール 流れよわが涙、と孔明は言った (ハヤカワ文庫JA)の感想 タイトル買い。表題作はテンポ良く楽しめた。他の作品も少しワンパターンな気はしたが、面白く読めた。 読了日:05月31日 著者:三方 行成 第一次世界大戦 (ちくま新書)の感想 第一次世界大戦について基本的な流れをわかりやすく説明していると思う。個人的には、第一次世界大戦がなぜおきたかは説明可能ではないのではないかと思うので、逆に単純化しすぎてないか心配になった。 読了日:05月31日 著者:木村 靖二 アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現―ラクに気持ちを伝えるためにの感想 アサーションについては、平木典子さんの一連の本は読んでいたので、学び直しのために別の方の本を読んだ。エリスのABCD理論は忘れていたが、認知療法の一環という感じがした。私は自分の感情を把握するのが苦手なのだが、それには少し届いてない感じだった。 読了日:04月30日 著者:土沼 雅子 東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)の感想 明治~昭和初期の貧困街への潜入記などをまとめてあり、とても生々しく描かれている。政府や自治体が下層民を棄民(散布)しているのは他のフィクションでも知っていたが、どうどうと説明されるとさすがにひく。 読了日:04月30日 著者:紀田 順一郎 ダンジョンクライシス日本 (ハヤカワ文庫JA)の感想 文章がこなれてないのと、テイストが合わないところもあり、いまいち楽しめなかった。 読了日:04月30日 著者:緋色 優希 巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)の感想 最初の2篇と最後の3部作はわかりやすくて楽しめたが、ほかはとっつきにくさからちょっと入り込めなかった。作品のせいというより、自分の加齢による理解力の劣化を感じさせれらた。作者のテーマは人間だけではなく、思考するということはなにか、思考しているという意識や主体性は一瞬一瞬の仮想だとして、それを認知している状態が可能である物理法則や宇宙構造という存在に、その上に成立した思考からどんな意味付けをすることができるか、ではないかと思った。 読了日:04月10日 著者:ピーター・ワッツ ランドスケープと夏の定理 (創元日本SF叢書)の感想 提示たれたイメージは壮大で楽しそうだし、登場人物や会話のノリは好きだ。ただイメージの具体的な描写が少ないのと、少し話がかるすぎる感じはした。 読了日:04月03日 著者:高島 雄哉 マルドゥック・アノニマス4 (ハヤカワ文庫JA)の感想 読了したあとに3巻を読んでなかったことに気がつく。バロットがウフコックの救出に動くというストーリーに全く違和感がなかった。マルドゥックシリーズは男性視点でハードボイルドな語り口になると、私にはちょっとくどい感じになるが、バロットが主役になることでバランスが良くなる気がする。話の構成としてもバロットの持つ多面的な魅力が見られて楽しかった。 読了日:03月27日 著者:冲方丁 戦後の貧民 (文春新書)の感想 作者の貧民シリーズの戦後編。貧民に寄り添いながらも、市井の人たちからどのように見えたかと点を踏まえているところが面白いところ。対面を重んじた自治体、政府の浄化施策や、民衆の治安、衛生レベルの向上による不寛容を作者は嘆くことは、昭和の貧しい家庭でそだった私にも響く。しかし、実は貧民自体の感性も変化、というか民衆の一部としての同一化が進んでおり、それ自体は喜ばしいものと思っている。 読了日:03月20日 著者:塩見 鮮一郎 うどん キツネつきの (創元SF文庫)の感想 最初の表題作で作家の才能をひしひしと感じた。その後の「シキ零レイ零 ミドリ荘」「母のいる島」と不思議な雰囲気の中で恵まれたというわけでなくても、なんだか前向きさを感じる作品も好きだった。 読了日:03月13日 著者:高山 羽根子 最後の弾左衛門: 十三代の維新の感想 作者がライフワークとして追ってきた第13代弾左衛門について、最後に振り返って自分の人生と想いが語られている。筆がのりすぎているところもあるが、それだけ思い入れがあり、かつ最後ということで想像力の翼が広がっているのだと思う。 読了日:03月06日 著者:塩見 鮮一郎 うつのリワークプログラムの感想 うつ病からの復職にむけて、擬似職場でリハビリを行うリワークプログラムの紹介。グループでの作業だけでなく、リーダー役やグループ間での調整など、かなり本格的な印象。実際の職場でかかるストレスに対応できないと再発の可能性が高いので、しっかりしたほうが安心だと思う。 読了日:03月01日 著者:五十嵐 良雄 接続戦闘分隊: 暗闇のパトロール (ハヤカワ文庫SF)の感想 タイトルからハードなミリタリーものかと思ったが、実態は少し古めかしいサイバーパンクだった。ミリタリー要素もしっかり描写されているし、戦闘の緊張感もばっちりあった。本筋のサイバー空間のシンギュラリティ的存在についての展開も興味深く、とても楽しめた。 読了日:02月25日 著者:リンダ ナガタ 円環宇宙の戦士少女 (ハヤカワ文庫SF)の感想 予想より硬派な出だしで、その後の展開もそんなに甘くはない。ちゃんとジュブナイルとして少女の成長や愛情が描かれていて楽しめた。 読了日:02月22日 著者:クローディア グレイ 天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)の感想 感無量。万感の思い。作者に最大の感謝を送りたい。旅の終わりはいつも少しさびしい。それでもこれから作者は私達をまた違う場所へ連れて行ってくれる希望がある。たどり着いた先に見える景色は、旅を始めたころどう変わるのか。作者も読者も今後を楽しみにしたい。 読了日:02月20日 著者:小川 一水 女王陛下の航宙艦3: トラファルガー特命指令 (ハヤカワ文庫SF)の感想 十分な熱量があって、安心して楽しめた。 読了日:02月19日 著者:クリストファー・ナトール 女王陛下の航宙艦2: ネルソン作戦発令 (ハヤカワ文庫SF)の感想 同じノリなのだが、安心して楽しめる。 読了日:02月17日 著者:クリストファー・ナトール 女王陛下の航宙艦 (ハヤカワ文庫SF)の感想 正統派のミリタリースペースオペラとして出来がとてもよい。たぶんにご都合はあるのだが、登場人物たちが苦労と苦悩している姿が十分に描写されることで、ストーリーとしてアリになっている。 読了日:02月14日 著者:クリストファー ナトール 言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)の感想 人に似たヒューマノイドの生活描写というのはいつも興味深いのだが、砂に分解されて言葉が本当に力を持つ世界というは魅力的だ。 読了日:02月12日 著者:九岡 望 星間帝国の皇女 ―ラスト・エンペロー― (ハヤカワ文庫SF)の感想 ものすごく星間帝国が舞台でその崩壊がテーマなのだが、登場人物の軽妙なやりとりのおかげでファミリードラマや探偵もののように感じてしまう。この親近感は作者のセンスであり、とても良い点だと思うし、スペースオペラの魅力である。 読了日:02月09日 著者:ジョン・スコルジー 硫黄島-国策に翻弄された130年 (中公新書)の感想 硫黄島の最初の入植者が日本人ではなかったことや、小笠原諸島の名前の由来など、知らなかったことがたくさんあった。国策で庶民の生活が大きく左右され、その意見が消えるのをじっと待つというのは、どんな国や政治体制でもよくあることだと思う。だからといって、その声を無視していいというわけでない。 読了日:02月06日 著者:石原 俊 セミオーシス (ハヤカワ文庫SF)の感想 理想主義者たちの植民生活で、かなり厳しい環境でギスギスした人間関係の描写が楽しかった。スティーブンランドが出てくることで世界は広がったが、人間だけのギリギリの生活のほうがすきだった。 読了日:02月04日 著者:スー バーク 薫香のカナピウム (文春文庫)の感想 前半の未知の生態系とともに暮らす、人間と似ているけどちょっと違うヒューマノイドの生活描写がとてもよかった。後半の展開も悪くはないけど、もう少し情緒的でもよかったかも。 読了日:01月29日 著者:上田 早夕里 ゲームの王国 下の感想 率直に言うと、上巻の緊張感が失われたのは残念だった。それでも登場人物たちが虐殺という厳しい現実とその復興の時代をゲームという美しいものに惹かれてながら生き抜いていくとう、作者の描いたイメージにはとても好感が持てた。 読了日:01月25日 著者:小川 哲 ゲームの王国 上の感想 カンボジアでのポル・ポト政権の虐殺についてはネットなどの記事で知っていたが、それまでの経緯やそのときの人々の生活の実態がどういうものか、実際は違うのかもしれないが、とても具体的かつ身近なこととして感じることができた。その描写力が素晴らしい。それにプラスして、科学や社会とは異なる文脈で世界を捉えて生活する人々がとても魅力的だった。 読了日:01月24日 著者:小川 哲 天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART2 (ハヤカワ文庫JA)の感想 でっかい、話がでっかい。とてもワクワクする。そして最後はやっぱり性愛か… ラスト1巻、寂しいけど心して待ちたい。 読了日:01月22日 著者:小川 一水 筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜- (ガガガ文庫 お 5-6)の感想 読んでいてとても幸せだった。最初の異能力バトルとしての設定がちゃんと世界全体を説明可能な原理として結びつくところがすごくゾクゾクした。これまでの戦いが大きな歴史の一部として位置付けが明確になり、謎とされてきた人物たちも含めてみなの意思や想いがはっきりしてきた。それでも状況はとても苦しい。ただそこから逃げない登場人物と作者の姿勢がとても素敵である。 読了日:01月19日 著者:オキシ タケヒコ 戦争と虚構の感想 昔はこういった文章の本がいっぱいあって、よく読んでいたことを思い出して、懐かしい感じがした。論説の内容は理解はできるが、作品の捉え方が私とは違う部分もあるので、共感までは至らない。それでも意見の多様性があり、こういった文体の本がちゃんと出版されることは嬉しいことだと思う。 読了日:01月14日 著者:杉田 俊介 昭和二十年夏、女たちの戦争 (角川文庫)の感想 かなり裕福な家庭や特異な立場の女性の戦時下、戦後の話。吉武さん、赤木さんの過酷な体験はあるが、庶民よりは生活レベルは上だったと思われる方々でも、それでもかなりの苦労が忍ばれる。もちろん生活の中では楽しみや喜びもあったのだろうが、それでも全体のトーンはやはり苦しさを感じる。 読了日:01月08日 著者:梯 久美子 終わりなき戦火 老人と宇宙6 (ハヤカワ文庫SF)の感想 この間もスペオペとして楽しめた。5巻以降はシリーズ名に違和感があるが、それはそれとしてエピソード自体は十分魅力だと思う。 読了日:01月07日 著者:ジョン・スコルジー 戦いの虚空 (老人と宇宙5)の感想 エピソードごとにテイストが違うのだが、どれもちゃんとユーモアのある作者の味が出ている。ドタバタ外交コメディだが、やはり状況はとてもシビアで、そのギャップも魅力だと思う。 読了日:01月06日 著者:ジョン・スコルジー ゾーイの物語 老人と宇宙4 (ハヤカワ文庫SF)の感想 前巻の裏話。語り手が異なることで作者の引き出しが増えた感じがした。筋書きはわかっているが、しっかりした人物描写をベースにしたストーリーの起伏に感情移入して楽しめた。 読了日:01月04日 著者:ジョン・スコルジー 最後の星戦 老人と宇宙3 (ハヤカワ文庫SF)の感想 大団円。当初のぶっ飛んだ設定と思ったところがうまくストーリーの中核として使われていた感心した。最後少し強引な感じがするところはあるが、スペオペとしてとても楽しめた。 読了日:01月02日 著者:ジョン・スコルジー 読書メーター #
by lifeforone
| 2020-01-07 23:38
| 読書
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