「対岸の彼女: 角田光代
女性の書き方が本当に上手だと思う。
「エコノミカルパレス」では主人公は透明でほとんどなにも感じたり、考えたりしていないように思われた。
「対岸の彼女」では違う。
しっかりと女性たち(特に30代の)の実感が描かれている。
小夜子の「こんちくしょう、こんちくしょう」と言いながら自転車をこぐ姿や、葵の東南アジアで騙されたときの「でも私はこっちの世界を選ぶんだ!」という姿が、ものすごくリアルというか、身近に感じられた。
ナナコを中心とした若いころのエピソードはちょっとリリカルな感じもしたが、それを踏まえた上で現実の30代の人生があると言うのも納得した。
そしてメッセージ性も結構強くて個人的にはお勧めできる一冊だ。
ちょっと毛色は違うかもしれないが、安彦麻里絵の「コンナオトナノオンナノコ」にとても近い作品の感じがした。